いきなりカタい話ですが、今朝の地元紙朝刊1面トップ記事を見て、暗澹たる気分に浸ったのは私だけではないでしょう。
日本は、水俣病という空前の有機水銀中毒公害事件を経験していながら、水銀を大量に輸出していたというのですから。水俣病は、企業の利益を優先し、人の命と健康を軽視した結果、起きたものです。そして、国はそれを止めなかった、つまり、国民の命と健康を守るべき責務を果たさなかったことが、被害拡大を招いた原因でもありました。このことで国に法的責任が厳然と認められることは、平成16年10月15日の最高裁判所判決で明確に示されています。
そこに、今回の輸出大国報道です。
輸出された水銀は、どうなるのでしょうか?輸出先で水俣病を引き起こすかもしれません。それだけではなく、水銀は気化しやすいこともあり、大気中に放出され、それが巡り巡って日本にたどり着くかもしれません。世界の趨勢は、水銀の使用・排出規制の方向にあります。そうした中で、まさに野放し状態のわが国の態度はどのように映るのでしょうか。
人の命と健康よりも企業の利益を優先する考え方は、いまだに改まっていないと言わなければならないでしょう。
環境省は、アジア大陸から大気の流れによって日本に到達する粒子状水銀の観測をしています。ターゲットは、中国などの石炭火力発電によって大気中に放出される水銀の監視なのでしょう(石炭には水銀が含まれているので、これを燃やせば大気中に水銀が放出されることになるそうです)。それはそれで大切なことかもしれませんが、世界の水銀汚染の一翼を担っているのが日本から輸出された水銀だった、などということになれば、みっともないことこの上ない気がします。まずは早急に、国内の水銀動態把握に努めるべきでしょう。
私たちの子や孫、人類の明日のために。
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