昨日,全国B型肝炎訴訟の原告・弁護団と国との間で,和解により解決する基本合意書が締結されました。これにより,現在提訴中の方のみならず,未提訴の被害者の方も,新たに提訴することによって救済を受けることが可能になりました。まだまだ課題は残っていますが,解決の第一歩として高く評価したいと思います。ここに,昨日付で発表された全国原告団・弁護団の声明を載せておきます。
2011年6月28日
声 明
B型肝炎訴訟・基本合意締結及び総理大臣の謝罪を受けて
全国B型肝炎訴訟原告団
全国B型肝炎訴訟弁護団
1 本日、私たちは、国とB型肝炎訴訟解決のための基本合意を締結しました。また、合意後に総理大臣とも面談をして直接謝罪を受けました。これにより、B型肝炎訴訟は原告の個別和解に進むことができます。また、現在原告になっていない感染被害者の救済の途も開かれました。私たちは、本日、基本合意に至ることができたことを心から歓迎するものです。
2 しかし、この基本合意に至るまで、余りに長い時間がかかりました。平成元年に先行訴訟が提訴され、平成18年最高裁判決まで国は因果関係や責任を争い続けました。最高裁判決の判決により国の責任が認められても救済措置は取られず、原告以外の感染被害者に対する謝罪も被害回復もなされませんでした。この間に、どれだけ多くの救われるべき被害者が救われずに亡くなってきたことでしょう。最高裁判決の原告5名うち2名が亡くなり、本全国訴訟の原告も提訴後16名が亡くなっているのです。加えて、この間、両親や・きょうだいを亡くし、あるいは、母子手帳や医療記録が処分されるなど救済を受けるための証明手段を失った被害者も多数います。
このように、国が解決を遅らせてきたことは、多くの被害者の命を失わせたことに加えて、救済されるべき被害者の救済手段を奪ったことになるのです。
国はこの点を十分理解・自覚をして、今後の対応にあたるべきです。
2 次に、基本合意書には、国が集団予防接種での注射器等の連続使用によって、甚大なB型肝炎ウイルス感染被害を発生させたこと、さらに、その被害の拡大を防止しなかったことについて責任を認め、感染被害者及びその遺族に謝罪をする旨が記載されています。本日の調印式においても、細川厚生労働大臣は感染被害の発生とその拡大の責任を認めて謝罪をしました。
私たちは、国が謝罪をすることは、私たち被害者の心の慰謝という意味に加え、B型肝炎患者、感染者への差別、偏見を解消する大きなきっかけになるものと考えています。
私たちは、自分の責任でB型肝炎ウイルスに感染したものではない、国の加害行為で生じたたくさんの感染被害者の一人なのだということを国民に知ってもらうことこそが、差別や偏見をなくす最大の方法だと思います。国は、この謝罪の意思を、本日だけでなく、常に国民に対して表わし続けてもらいたいと考えます。
3 さらに、今後2度とこのような感染被害を生じさせないために、国には、このような甚大な感染被害を生じさせ、拡大させた原因を究明し検証を行うことが求められています。合意書にあるとおり、第三者機関を設置し、私たち原告団・弁護団も加えたうえで、きちんとした真相究明・再発防止を行ってもらいたいと思います。
4 今回の基本合意で救済されるのは、感染被害者全員ではありません。被害者の認定のためには、一定の要件が必要であり、さらに前述したとおり、あまりに長い時の経過により証明手段を失った方も多いからです。
そうであるからこそ、肝炎患者への恒久対策を充実していくことが、国の責任でもあるのです。基本合意書には、国が、ウイルス検査の一層の推進、肝炎医療の研究の推進、医療費助成等々の必要な施策を講ずるよう努めることが定められていますが、この点を一般論ではなく具体的に進めることが求められています。さらに、総理大臣からは数十万人とも言われる感染被害者を発生させたことの事実を重く受け止め、今日が新たなスタートラインとして基本合意に定められた政策課題を実行していきたいと述べました。その言葉を真に実践するようお願いする次第です。
私たちもこれら施策の実現のために努力する所存です。
5 以上のとおり、本日の基本合意は、B型肝炎訴訟の解決の第1歩となりましたが、B型肝炎問題がこれで解決した訳は決してありません。
和解の内容についても、特に、無症候キャリア及び発症後20年以上経過して提訴した慢性肝炎患者に対する救済水準はまったく不十分なものです。私たちは、今後、この基本合意書の和解内容をさらにより良いものにしていくことが必要であると考えています。
先日の札幌地方裁判所の和解協議期日において、裁判長も、基本合意はベストのものでなく、救済の範囲、額、方法、とりわけ除斥の問題については、「あらためて国会その他の場でより良い解決をいただければと思います。」と所感を述べております。裁判所自らが、立法にあたって除斥期間という「限界」を乗り越えた救済内容を実現すべきであるとの考えを示したものです。
私たちは、今後、個別和解の迅速な実現に全力を挙げてまいりますが、同時に、恒久対策の実現、真相究明と再発防止に尽力するとともに、さらに十分な被害救済の実現を目指して一層努力を続けることをここであらためて宣言するものです。
以上
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